2007年12月24日

地図で読む世界情勢 第1部 なぜ現在の世界はこうなった




 地政学的観点から世界の成り立ちとその情勢を見てみましょうというフランスのテレビ番組の内容を書籍化したものです。なかなかなるほど地図を交えた解説は分かりやすいものになっています。

 内容はガルシア島など普段は触れられない重要な位置づけとなっている箇所などを漏らすことなく網羅しています。そうした世界情勢を把握した上で、最後に書かれている日本の情勢を見つめることで日本というのは世界の中ではどのような状態となっているのかがわかりやすいのではないでしょうか。

 ただ、内容はやはりかなり薄っぺらいと申しますか、言葉が足りない箇所ばかりと言ってしまってよいかもしれません。そう考えますと、この本で知識を蓄えるというよりも、この本から各国の情勢などに興味を示すことの足場というほうが正しい把握ではないかと思います。

 地政学、政界情勢の足がかりはこの本から始めましょう。
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2007年12月23日

経済財政戦記―官邸主導小泉から安倍へ




 「官邸主導」の著者が記した続編ですね。「官邸主導」読んでないけど・・。

 内容は完全に経済中心に進んでいきます。非常に大きく分けてしまえば経済成長を柱とする上げ潮政策を推し進める中川秀直、竹中平蔵と、消費税増税による確実たる財源を手にするべきとする与謝野、谷垣とのぶつかり合いみたいな感じですかね。

 2011年度までにプライマリーバランスの黒字化を達成するという中長期戦略目標は同じであれど、その方法論には様々な思惑が渦巻いているというところです。自民党への税制丸投げは、文句を言うならお前がやってみろという「そんなんやってしまっていいの??」という奇異に写りながらも、代替案に関する攻防も見逃せません。やっぱり政治家は文句言うだけじゃ勤まりません。

 個人的には消費税増税はやはり税収減を招き、それ以降悪循環に陥るのではないかと言う不安があります。そんな僕はインフレ論者かな。とりあえず最近の、社会保障に限定して使いますから安心してください、という煽り文句はいかがなものかなとは思います。
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2007年11月27日

どくそせん

どくそせんどくそせん
販売元 : Amazon.co.jp 本
価格 :
[タイトル] どくそせん
[著者] 内田 弘樹
[種類] 単行本
[発売日] 2007-08-31
[出版社] イカロス出版

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 史上最強の軍団VS史上最大の軍団、第二次世界大戦でも最大規模とも言われるあの独ソ戦がまさか「萌え」となって書籍化されるとは・・・。

 かといっても内容はきっちり書いています。バルバロッサ電撃作戦から始まり、翌年以降も続く独ソ戦を余すところなく描ききっています。一番評価できるのは地図などを利用した戦線をうまく載せてくれた事です。こういった類の本は載せてくれなくて、イメージが沸かないことが多々あるのでありがたい。

 ちなみにノルマンディーやアフリカ戦線などの話は出てこないので、そちらなども知りたければもう少し真面目な文献を読みましょうw
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2007年11月08日

日本よ、「歴史力」を磨け―「現代史」の呪縛を解く

日本よ、「歴史力」を磨け―「現代史」の呪縛を解く日本よ、「歴史力」を磨け―「現代史」の呪縛を解く
販売元 : Amazon.co.jp 本
価格 :
[タイトル] 日本よ、「歴史力」を磨け―「現代史」の呪縛を解く
[著者]
[種類] 単行本
[発売日] 2007-09
[出版社] 文藝春秋

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 櫻井氏や中西氏などいわゆる保守論壇と言われる方たちの対談本という位置づけになります。

 第一章は櫻井氏の書き下ろしとして対談という形式になっているわけではありませんが、安倍政権時に起こっていた従軍慰安婦問題について言及しています。それ以降は第二次世界大戦や原爆投下、冷戦構造、もはや恒例ともいえる朝日新聞への言及などで構成されています。

 話の内容はマオという毛沢東の実態を暴露した本を中心に取り扱っています。この本は僕自身は読んだことがない代物なのですが、この本を読んでいるとソ連コミンテルンの動きをかなり記載しているような印象を受けます。それらの中でも張作霖爆殺事件や第二次上海事変などにコミンテルンが関与していたのではないかという見方があるようです。個人的にはそれはどうもいきすぎ感はありますが、一つの観点としては面白いものを感じます。ただ、本全体としてこのマオという本を中心に取り扱いすぎな気がしました。

 保守系らしく、物事は実証を用いたりロジカルに語る分変なリベラルのような目的ありきの言論になっていないところには好感がもてます。保守側がどのように歴史を考え、それに基づいて現在の日本と世界の状況を考えているかがよくわかります。保守は冬の時代との印象を最近持っている僕ではありますが、だからこそ読む価値はあると思います。
posted by やくも at 23:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍

2007年10月24日

2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?

2ちゃんねるはなぜ潰れないのか? (扶桑社新書 14)2ちゃんねるはなぜ潰れないのか? (扶桑社新書 14)
販売元 : Amazon.co.jp 本
価格 :
[タイトル] 2ちゃんねるはなぜ潰れないのか? (扶桑社新書 14)
[著者] 西村 博之
[種類] 新書
[発売日] 2007-06-29
[出版社] 扶桑..
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 ま、タイトルは某所のパクリですね。本人も自覚があるようなことが書いてあったような気がします。内容は2ちゃんねるの話が中心という訳でもなく、このITという世界についてを政治や国際の話を混ぜ合わせて2ちゃんねる管理人ひろゆき氏が語っています。

 読んでいてやはり面白いというのはひろゆき氏というのはよく言えばすごい現実主義者で、あんまり個人で保有する理想だとか夢だとかを持っていないような印象を受けました。僕は梅田氏の著書を読んだことはありますが、彼というのはまあ夢とかすごい持っていてそれを実行するさきがけのようなものになりたいような印象を持っています。ああしたらどうか、こうしたら面白いのではないか、きっとビジネスとして成功するとか、そういうことを常に考えている、しかしひろゆき氏は全面否定はしないですが、なんというかそんなことして本当に儲かるんですか?という現実に即したところがあります。すごく頭の回転の速い人なのだと思います。僕と真逆だな。

 著書の中で佐々木俊尚とひろゆき氏が対談をしているのですが、佐々木氏はひろゆき氏のことを「実も蓋も無い言い方」と評しています。なんかぴったりだと思いますね。そういうところが2ちゃんねるのマスコット的存在とされる理由の一つなのだと思います。

 思ったより面白かったですよ、オススメです。
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2007年10月17日

大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇

大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇 (文春文庫)大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇 (文春文庫)
販売元 : Amazon.co.jp 本
価格 :
[タイトル] 大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇 (文春文庫)
[著者] 堀 栄三
[種類] 文庫
[発売日] 1996-05
[出版社] 文藝..
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 元大本営情報課参謀の堀氏が沈黙を破って書かれた著書であります。歴史家の保阪正康氏が推挙している書籍で、出来は素晴らしいものがあります。

 内容は堀氏が素人同然の情報を取り扱う分野へ転属されてから自衛隊から身を引くまでの情報参謀としての活躍を記しています。特徴的なのは堀氏は自身のことを「堀」と称して第三者の立場で内容を記すことで客観的な視点を心がけようとしていたことです。

 時代は大本営情報課の中でもドイツ専門の人間達は同盟国というだけで相手から貰える情報をそのまま鵜呑みにする傾向があったこと、ソ連専門はすべての情報を疑い、情報はタダでは貰えない、こちらからわずかな痕跡すらも拾い集めるように神経戦のような情報解析を行っていることなど、各所での情報に対する考え方がかなり違っていたことを述べています。

 圧巻は台湾沖航空海戦の大誤報の話。日本はこの幻の大戦果を鵜呑みにし、ルソン島決戦からレイテ沖決戦に戦略の大転換を行い、アメリカ軍のフィリピン奪還作戦(マスケティーア作戦)を防止する”捷一号作戦”を立案します。この根拠となる台湾沖航空戦は報告者の戦果をそのまま鵜呑みにしてしまうという状況に直面し、実際に報告した人物へ空母の特徴などを問い詰めていくとまともに回答が帰ってきたのが極少数という有様だったことが書かれ、堀氏自身は大本営に台湾沖航空戦の戦果は信用出来ないという報告を行いました。

 しかし、これは結果として大本営作戦課は考慮することなく捷一号作戦を発動します。堀氏は自分の報告が握りつぶされたことに対して特に怒りは無く、情報というものは無数に存在しそれらを取捨選択することはとても難しいことであって、歴史家が堀氏の報告を採用していればこのようなことは無かったという批判の声は的外れであると詳述しています。

 それ以外にも自衛隊としての活動などを含めて様々な情報の取り扱いの話が出てきます。こういう著書というものは今の時代でも重宝されるべきなのですが、はてさて今の日本というものはこのような情報の大切さというものがキチンと生かされているのか、本当に過去の過ちとやらを反省しているのか、見当違いの反省をしているのではないかと少々心配になってくるものであります。
posted by やくも at 00:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍

2007年09月28日

後白河院

後白河院 (新潮文庫)後白河院 (新潮文庫)
販売元 : Amazon.co.jp 本
価格 :
[タイトル] 後白河院 (新潮文庫)
[著者] 井上 靖
[種類] 文庫
[発売日] 2007-07
[出版社] 新潮社

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 保元の乱、平治の乱など激動の時代を潜り抜けた後白河院の人生をその時代の識者4名の視点から語り、その客観性から人物像を浮かび上がらせるという面白い手法をこの小説は取り扱っています。

 天皇、法皇という立場の観点からこの激動の時代がどう移ったのか、それらを4名が語っているわけですが、平清盛など平家がどのようにして実権を掌握し、そして源頼朝がどのようにしての政治的駆け引きを行っていたか、それに抗う手段を後白河院はどのようにして講じて行ったか、なかなか読み応えがありました。

 個人的には義経の描写が少なかったなぁという印象がありますが、それを差し引いても後白河院の”大天狗”政治手腕を垣間見ることが出来ます。
posted by やくも at 02:25 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍

2007年09月08日

第二次大戦とは何だったのか?




 買ったのは文庫本なんですけど、リンクが無かったのでこれで。

 福田和也氏による第二次大戦とは一体何だったのかを、第一次世界大戦や当時の各国指導者の特徴、第二次大戦がその後にもたらした結末などを総合的に総括したものです。

 内容としては各国指導者ルーズベルト、チャーチル、ヒトラー、ムッソリーニ、蒋介石、東条英機を分析。特にチャーチルの分析は面白かったです。チャーチルといえば第二次世界大戦にアメリカを参戦させるために日本に対して強硬姿勢を取ったことで有名ですが、今の日本人の中では不思議と親近感を抱く人が少なくありません。これはチャーチルの行ったことを単に知らないだけなのか、対米戦争を始めてしまった指導者を倒したからだという戦後民主主義の亡霊を見ているだけなのかよくわかりません。個人的には色々なものを代償として失ったチャーチルですが、彼が手にした大戦の勝利というものが日本に取って羨ましいという感情があるのかなとも思えます。

 そうして福田和也氏は第二次世界大戦というものは”世界史”という観点から観れば、日本が成り行きとはいえ、大東亜共栄圏の設立という己の世界戦略を掛けて戦った唯一の戦争であったと評価しています。あとがきでも書かれていますが、福田氏はその世界大戦を防ぐことが出来たのかという問いには明確にこの本では答えていません。

 僕自身としては対米英戦争はよほどの外的要因がなければ防ぐことは出来なかったのでは無いのかなと考えています。結局利害が対立するという意味では日本が中国へ進出することは当時のブロック化が進んでいた世界情勢から考えれば、その戦略を選択しないほうが不自然です。そしてそうなれば中国の利権として必ず米英とぶつかるのは必然でした。太平洋戦争の原因として日本史の中で様々な要因が書かれていますが、それら部分的要因を取り除くことが出来たとしてもまた違った要因が生まれ、そして対米戦争という名では無い戦争がおこったのではなかったかと思うのです。

 そのような大きな世界史的観点からすればよほどの大きな力が働かない限り、戦争というのは相手があってこそですから、日米英がそのような戦略を持ち続けている限りは結局のところは同じ結果に帰結するのだと思います。
posted by やくも at 00:52 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍

2007年08月20日

紫禁城の黄昏





 清朝最後の皇帝溥儀の帝師を勤めたR.F.ジョンストン氏が描いた紫禁城と中国を取り巻いたドキュメント。

 岩波文庫版では第一章〜第十章、第十六章を省略しているそうで、随分とバッサリ削除したものです。このハードカバーの本では完訳版となっています。皇帝溥儀の教育役を務めた欧米人ということで第一級資料と言っていいと思います。

 内容はかなり面白いですね。西太后の執政から皇帝溥儀の擁立、辛亥革命による退位、シナ政府で繰り返されるクーデター、それらから共和制よりも君主制を懐かしんでいる民、清朝の故郷となる満州への思いなどなど、当時皇帝の近くにいた欧米人がどのように中国国内の政局を捉えていたか、非常に興味深いものがあります。

 関東軍が陰謀をもって無理やり溥儀を満州へ連れ去った、そんなシナで噂される内容は真っ赤な嘘である、そう断言するジョンストンの資料が東京裁判で採用されなかったのは確かに当然といえば当然かもしれません。

 この本の煽り文句はそうした東京裁判史観を覆すだとか岩波への批判などがありまして、それらは全くもってごもっともでありますが、それらを抜きにしても歴史資料として非常に面白い内容となっています。
posted by やくも at 00:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍

2007年08月09日

地果て海尽きるまで―小説チンギス汗






 言わずとしれたモンゴル帝国を築き上げたチンギス・ハーンのお話です。正確に言いますとチンギスが誕生してからフビライ・ハーンによる元寇までを描いています。内容は面白いですね。ポイントは3つあります。

 1.捕虜の屈辱
 この小説ではチンギスの心の中では一度捕虜になったことに対する屈辱を思い出しては奮起するというシーンが出てきます。チンギスは家族しか勢力が無かった初期に、敵に捉えられて引きずり回されるという屈辱を味わっています。敵の中にいるチンギスに味方する人間に助けられるのですが、彼の中では相当な屈辱となっていると何度も出てきます。徳川家康の三方ヶ原の戦いのようなイメージなのでしょうね。

 2.宗教の考え方
 モンゴルでは天神、テングリと呼ばれる神を崇めています。チンギスは他の帝國を打ち破った後の統治において、モンゴルの神を押し付けることはしませんでした。これはモンゴルという大帝国を治めるために必要なことであるとの認識がチンギスの中で存在しています。他の部族には他の神が存在し、崇められており、それらを変えることは民の憎悪を作り上げることになることを悟っていたからです。

 3.反抗する敵に対する虐殺
 これは第五代汗となるフビライ・ハーンとは真逆となるのですが、チンギスは最初に降伏勧告を行い、それに従った人間は許すのですが、一度でも刃向かった人間(有能な人間には特例あり)には女子供容赦しませんでした。結果として敵勢力はどうせ殺されるならと大いに奮戦してしまうのですが、チンギスの中ではのちの禍根を潰す上で必要な処置だったのでしょう。

 こうしてチンギスは大帝国を築くことになりますが、悲しきことかな大帝国にとって例外は無く、チンギスがこの世を去った後は後継者争いが起きてしまい、フビライ亡き後は滅亡の一途となってしまうのですね。

 なお、この著書は地図やらが何も無いので、地名などがイメージしづらかったですね。この点は直して欲しかったなと思います。
posted by やくも at 03:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍

2007年07月29日

検証・昭和史の焦点



 昭和歴史家としても有名な保阪正康氏の著書。昭和史の論点など同類の著書を刊行していますが、今回は総括的な観点の昭和史の内容を21に分けて論じています。
 論じている内容はよく話題に上るような内容で開戦、真珠湾、戦中、戦後、昭和天皇などに分けることが出来ます。それぞれ21の論文で構成されており、週刊春秋での論稿や書き下ろしなどあります。

 軍人恩給についてはあまりよく知らない話なので面白かったのですが、一つ引っかかったのは「トラウトマン工作 内幕のドラマ」という論文。当時泥沼の日中戦争に足を踏み入れた日本政府はトラウトマン工作をもってして和平交渉を行おうとしていましたが、結局は決裂してしまったお話なのですが、その時の中国国民党の陳立夫という政務担当の人間が言うには中国、日本、ドイツをもってしてイギリス、ソ連という白と赤の帝国主義と戦おうという戦略を話していたというものです。保坂氏はそれを裏付ける根拠は無いことを前置きしつつも、この戦略を”遠大な戦略”と評価し、当時の日本指導者には理解出来ないだろうと結論付けています。

 だがちょっと待ってほしいのは当時の日本政府としてはもちろん日中戦争に遠大な戦略を持っていたわけではないことが定説となっていますし、それに対しては全く同感だったりするのですが、白と赤の帝国主義に対して敵対しようと画策するのは第一次世界大戦後に近衛文麿が唱えた英米の民主主義を排すの論文に近いものでは無いでしょうか。しかもこのとき、まさにその近衛文麿内閣では?

 ましてやこの陳立夫なる御仁はドイツと中国+日本によるソ連に正面作戦の構想まで語っています。これは後の松岡洋佑外務大臣がドイツのバルバロッサ作戦に呼応して日ソ不可侵条約を破って参戦しようと昭和天皇に奏上した内容に近いのではないでしょうか。もちろん約束事を重んじる昭和天皇は拒否します。

 さらにはそれ以上にノモンハン事変によって帝国陸軍はソ連率いる機甲師団に歯が立たず、近代化の必要が迫られることになります。当時の日本軍にすら歯が立たなかった国民党軍に何が出来ると?

 これはもちろんトラウトマン工作時からすれば未来の出来事になってしまいますが、以上を考えていた近衛文麿や軍部の指導部の戦略は、この保阪氏などの昭和歴史家から後に批判されています。

 この論文だけ少々クエスチョンが出ましたが、それ以外の論文は興味深く読むことが出来ました。
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2007年07月26日

自由と繁栄の弧




 外務大臣麻生太郎氏が提唱した外交方針として「価値の外交」「自由と繁栄の弧」を打ち出しスピーチを行った論稿含むものを書籍化したものです。

 タイトルとなる「自由と繁栄の弧」というものは東南アジアのCLV(カンボジア、ラオス、ベトナム)や中東、GUAM(グルジア、ウクライナ、アゼルバイジャン、モルドバ)などユーラシア大陸に沿った弧を指しています。メディアなどでは中国包囲網と言われたりします。もちろんそれもあるのでしょうが、これは基本的に地政学でいうリムランド理論の詳細版でしょう。その中で民主主義などの価値を共有出来る国々と結びつきを強めて参りましょうというものですね。さて、どこまでが本音ですかね。

 一番面白かったのはアジア各国との経済の結びつきについてP2Pという言葉を用いていることです。最近よく言われているFTAやEPAなどWTOとは別の経済協定を結ばざるを得ない日本としては、フィリピンやマレーシアなどとP2PにEPAを結ぶことで、経済的結びつきを強化しようとするところはアジアの”スタピライザー”として重要だと思います。

 1つ1つの論文はコンパクトに纏められており、非常に読みやすくなっています。
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2007年07月20日

海軍乙事件




 海軍乙事件とは太平洋戦争中に連合艦隊司令長官古賀峰一海軍大将を乗せた艦載機1号機がダバオへ向かう途中に行方不明そのまま殉職扱い、連合艦隊参謀長福留繁海軍中将を乗せた艦載機2号機は着陸に失敗し、途中に米ゲリラに捕まりZ作戦計画がアメリカ海軍に渡るという一連の事件を言います。

 当時の海軍は福留中将の証言などからアメリカ海軍までには渡っていないと判断していましたが、戦後の調べで福留中将と一緒に捕まった作戦参謀の山本中佐が持つZ作戦計画の書類が米軍司令部で解析されていたことがわかったものです。このドキュメントは連合軍側の資料や著者の取材により集めたものです。

 当時の海軍側の慌しさや福留中将を救出した陸軍のセブ守護隊などの描写は非常に細かく描かれています。他にも山本五十六連合艦隊司令長官が戦死した海軍甲事件、東京裁判以外において日本側で裁いたとされる八人の戦犯、日清戦争に起きた白神源次郎の逸話など3編を含んだ著書は戦史好きならお勧めの一冊だったりします。
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2007年07月15日

とてつもない日本




 麻生外務大臣の新書ということで。

 全体的なお題目としては国際的立場としての日本、内政、労働、外交、安全保障など様々な分野でマスメディアなどが報じている内容を別の違った観点から捉え、再構築して読者に情報を与えるといったものでしょうか。

 その内容はポジティブそのもので、政治家らしくマクロ観点で日本は捨てたもんじゃないよと語りかけています。いや、捨てたもんじゃないという言葉がネガティブに捉えられるほど、良く日本を描いています。こうしたマクロ観点で語っているため、実際の根拠だとか具体案だというものには乏しいのは仕方ないですが、マスコミがあえて報じない内容を記載しています。

 予想以上に枚数割いて書いていたのが靖国神社について。そもそも論をうまく用いており、内政問題であるが故、特アの意向は完全無視の対応案というものはなかなか興味深いものでした。

 あとは”ソートリーダー”の記載が面白かったかな?日本などの先進国以外にこのような立場を堅持できるかと考えれば、難しいんじゃないかなと思ってしまいます。

 外交における麻生ドクトリンは別の著書に書いているのかな?そういう意味を含めて現職だからまだ厳しいことは書けないことを考えても、全体の麻生外務大臣の考えが読める本です。
posted by やくも at 10:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍

2007年07月09日

フューチャリスト宣言




 Web進化論などで色々注目を浴びている梅田氏と茂木氏との対談本です。この本の面白いところは2つあります。

 まず一つはGoogleの革新についてベタほめ。要はGoogleが登場するまではインターネットの可能性というものには色々言及されていましたが、要はフロントエンドとしてどのようにすれば良いか、わからない。そんな時に出てきたのがGoogleなわけですね。

 Googleはユーザがキーワードを入力しただけで、その情報が画面に出てくる。ユーザはそれを選択して、情報を入手する。今では当たり前の状態ですが、デビュー時は衝撃的でした。今後Googleを上回るようなイノベーションとしては検索後にユーザが自分の判断で情報を選択するというのを、別ロジックで行うくらいでなければ出てこないのではないかと二人は語ります。

 もう一つは未来志向であること。これが二人の”フューチャリスト宣言”に繋がっていくわけですが、二人とも暢気なほどインターネットの可能性を信じている。今の日本の確固たるレール上を歩いていくような教育、社会構造に嫌悪感を抱きつつ、ネットワークの革新性を用いれば、現実社会でのおちこぼれもインターネットではその才能を発揮できるかもしれない。そんな前向き思考が世界を変える力になるのだと。

 夢見たいなことを語っていますが、この世に名を残す人物は多かれ少なかれそのような人物ばかりです。個人的にはそのような志を持っても所詮は一部の才覚のある人物だけが成功するだけではないかと考えがちになってしまいますが、日本はその影響が強すぎるのかもしれません。もうちょっとこの二人を見習って、未来を信じてみます。
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2007年07月05日

明治天皇




 激動とも言える明治時代において君臨し続けた稀代の君主、明治天皇の物語です。

 本書の内容は基本的に「明治天皇記」などを出典とする天皇の日常や明治維新、日清日露戦争などのマクロな出来事などを細かく説明しています。出典元の無い記載は信用無しくらいの勢いで、数々の出来事などを出典含めてうまく取りまとめられています。

 明治天皇の役割というのは非常にイメージしにくいものです。具体的に何かを行ったというものが無いからです。明治維新であれば大久保利通、西郷隆盛など、日露戦争で言えば陸軍は大山巌、児玉源太郎、海軍では東郷平八郎、秋山真之など。しかし、君主と言うものが評価されるのは決して彼らのような働きなどでは無いのです。

 「偉大な王とは、例えばスペインのフェリペ二世のように国事を自ら操ろうと欲する者のことではない。優れた大臣たちに信頼を置き、王権の威光でこれを支援する者のことである。」

 明治天皇の治世、歴代天皇の治世と言い換えることも可能ですが、内閣が奏上した政策に特に反対を表明することはありませんでした。これは天皇が自分の指摘を無視されることを嫌った側面もあるかもしれませんが、特に信任の厚かった伊藤博文などの人材をうまく登用し、彼らが活躍することで、古き良き時代とも言える明治を作り上げることが出来たのであることがよくわかります。

 そんな明治の偉人達がこの世を去り、家臣に恵まれなかったとされる昭和天皇、この時どのような思いでいたのか。そして現在グローバリゼーションが叫ばれるご時世、日本は明治に勝ち取った独立国としての振る舞いと誇りは胸に秘められているのでしょうか。

 明治は遠くありにけり・・・。
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2007年07月04日

歪められる日本現代史




 近現代史の第一人者秦郁彦氏の著書。本書は基本的に諸君!などの雑誌に寄稿した内容を集めた代物で、過去にも同様の内容の本が出版されています。取り扱われる題材は基本的に時事ネタ。特に歴史内容が本書の半分ほどを占めています。

 例えば最初に登場する沖縄での集団自決に対する取り扱いでは、集団自決があったと主張する大江健三郎氏を徹底批判しています。まあ、大江健三郎氏の内容では批判されて当然ともいえるのですが、その内容は学者さんらしく理路整然としています。

 最も今日深い内容は昭和天皇の記述です。昭和天皇についてはマッカーサーとの会談において、昭和天皇は自分はどうなってもいいから国民は助けて欲しいとの言葉にマッカーサーは感激したと伝えられています。例えばこれに関しては東京裁判で万が一用いられていれば、天皇に対する戦争責任のれっきとした根拠になったことは間違いありません。

 左右のイデオロギーに囚われることなく、事実に基づいた論理の展開は感銘を受けました。現在ではさすがに天皇主権説を主張するような輩はあまりいませんが、事実として大日本帝国憲法第一条、第五十五条を根拠とする天皇に主権無しは果たして昭和天皇の戦争責任を全てクリアにさせることが出来たのか。

 昭和天皇は戦後の独白録において、太平洋戦争の開戦を決断したことは正しかったと語っています。これは仮に開戦前に戦争反対を強く表明していれば、自分、または戦争反対の臣下は暗殺されていた可能性が高く、そうなったときに開戦となれば誰が戦争を終わりに出来るのか、今より状況はもっと悪い中での敗戦となったのではないか、このような旨を語っています。

 独白録の内容について秦氏は触れていませんが、左右の思想を抜きにして、客観的に考えてみるというのも面白いかもしれません。僕自身は天皇に戦争責任はゼロでないにしろ、皇室存続なくして今の日本は無かったと思っています。
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2007年06月24日

日本の戦争力 VS 北朝鮮、中国




 前著の「日本の戦争力」に続く中国、北朝鮮の”戦争力”にフォーカスを当て、さらに日本のあるべき姿を説いたものです。

 中国、北朝鮮に関する記載にはあまり突出すべき内容は無かったと感じています。例えば中国の脅威論などが去年当たり騒がれたと思いますが、彼らの軍事力というものは旧式装備がほとんどで日本からすれば現在の日米同盟+自衛隊がしっかりしていれば、特に脅威という代物ではありません。

 ただ、この本では中国の18年連続二桁増の伸び率となり、軍事費の不透明さを特筆することがあまりありませんでした。個人的主観としては現在は脅威ではなくとも、中国は日本とアメリカを合わせた形で戦略を見据えていると考えられますので、今後もこの伸び率は保持されるでしょう。ついこの間では日本の軍事費を越えたという話も出ています。ともすれば日本にとってはこのまま中国の軍事費が伸び続けるのであれば、軍拡せざるを得ない状況になってしまうのではないでしょうか。それが日本に対する中国の潜在的脅威なのだと理解しています。

 この本で読み応えがあったのは日本版NSC、FEMAなど国内の安全保障に対する考え方です。日本の政治システムとして縦割りシステムに対応する統合システムの存在、東京の機能停止に対応するためのホットスタンバイ型の国際都市の対応など、前著では見られなかった国内整備について語っています。これらはこれからの安全保障の議論において、語られるべき事項であると感じました。ただ、自衛軍に記載変更する際の考えについてはちょっと「心配のしすぎではないか?」と感じました。
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2007年06月01日

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来




 元富士通社員の方が書いた現在の年功序列制度の根底に存在するものがいかに若者を苦しめ、レールの上に乗ることに成功した4,50代の世代が年功序列制度に護られているのかを語っています。

 年功序列制度、こいつの構造的改革ってものを考えますとそもそも人々の価値観の改革から始めなければならんのかなという印象を受けました。そもそも若者達が汗水垂らしてがんばっている報酬というのはすぐに払われるものではなく、数年後、数十年後の出世払いによって払われる、つまり出世することが前提で社会システムが動いていた訳です。

 今の日本(というよりも世界的な流れとして)はそのような”成功した社会主義国家”としての体力は残っておらず、バブルの崩壊から若者達の採用格差の問題、失業率の対策としての派遣法など、年功序列制度という社会的に作られたレールというものは既に存在しない訳です。

 悲惨なのは乗ったレールに先が無かったパターンで、重要な若い時代を労力に捧げておきながら、手にしたレールの切符はなんの効力も無い空手形だった訳です。

 テレビやマスメディアでお経のように唱えられている格差社会というものは言葉の定義もさることながら、現在の社会全体を全く捉えていないものであることがよくわかります。がんばって結果を出せば多くの給料がもらえ、そうでない人は少ない給料となる。こんな当たり前の話は格差社会とは呼ばない、単なる年功序列時代を懐かしみ、自由主義、市場原理主義を敵視しているだけに過ぎないんですね。
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2007年05月25日

大英帝国衰亡史




 イギリス史には定評のある中西氏の著書。大英帝国の栄華と衰亡のポイントを1冊に纏めています。本書でも触れられている通り、大英帝国の通史としてはあまり多くの書籍は出ていないこともあり、貴重な一冊だと思います。

 本書では大英帝国の”栄華”を表している3つのポイントとして

・スペイン無敵艦隊との戦い
・18世紀のスペイン継承戦争
・ナポレオン戦争

 を取り上げています。これらに共通することは大英帝国の根底とも言えるその外交手法にあります。そのパワーオブバランスを意識した綱渡り的な外交戦略は同じ島国国家である日本は手本とするべきであろうと感じました。

 そして大英帝国の”衰亡”を表している3つのポイントとして

・アメリカ独立戦争
・ボーア戦争
・スエズ戦争

 を取り上げています。アメリカ独立戦争という挫折を味わいながらもナポレオン戦争に勝利し、ウィーン体制を築いたところにさすがは大英帝国の”威圧感”を感じずに入られませんが、ボーア戦争を契機とする大英帝国らしからぬ外交手法が歴史的なる衰亡という大きな波を抗うことが出来なかった悲しきロマンを感じさせます。

 大英帝国の命綱ともいえる植民地インド、生命線とも言われたシンガポール、これらの文章を読んでいると「満蒙は日本の生命線」という言葉を発した松岡洋佑満鉄副総裁の言葉が頭をよぎりました。

 大英帝国と日本、僕としては奇妙な共通項をいくつも感じさせるものでしたが、両国の運命を分けたものはその歴史的な外交伝統の有無とその民族性があったのではないかと思いました。

 今の日本というのはそんな歴史のフィードバックが行われているのでしょうか?そんなことを思い巡らせる一冊でした。
posted by やくも at 00:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍

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